企業金融 - 資本コスト編
CFA level 1に役に立つかもしれないノート。CFAプログラムの内容を開示する意図はありません。あくまで私、ぽいぽいが個人用としてまとめたものをシェアしているだけなので、これによって損害を被ったとしても一切の責任は負いませんので注意してください。
目次
WACC
Weighted average cost of capital(WACC) = 企業全体の資本の機会費用を債券、株式のコストの加重平均から算出する方法
WACC = {D/(D+E)}×kD(1-t) + {E/(D+E)}×kE
D:負債の額
E:純資産の額
kD:負債のコスト
kE:株式のコスト
t:法人税率
※ モデルによっては株式を一般株と優先株に分類していることがあるが、基本的な計算方法は同じである。
Firm ABC's capital structure is 40% debt and 60% equity. The cost of debt is 8%, the cost of equity is 13%. When the income tax rate is 45%, what is ABC's WACC?
WACC = (0.4)(1-0.45)(8%) + (0.6%)(13%) = 9.56%WACCは企業がすでに行なっている投資プロジェクトと同じリスクのプロジェクトの最適割引率を示している。リスクによって割引率の水準を変更する。
負債コスト
Cost of debt(負債コスト)は課税控除の対象なので税引後で考えなければならない。After-tax cost of debt(税引後負債コスト)は税引前のコストから(1-法人税率)をかければ計算できる。
負債コストは利用可能ならば満期利回り、利用不可能ならば信用格付けや同じ満期の債券から推定する。
優先株コスト
Cost of preferred stock(優先株コスト) = preferred dividend / price of preferred
一般株コスト
いくつかの計算方法がある。
CAPMを用いる方法
CAPM:k = rf + β(r - rf}
k:一般株コスト
rf:無リスク利子率
β:エクイティのベータ
r:市場収益率
配当割引モデルを用いる方法
DDM:k = (D1/P0) + g
k:一般株コスト
D1:来年の配当
P0:今年の株価
g:企業の期待成長率
リスクプレミアムを用いる方法
長期の社債にリスクプレミアムを加える方法もある。
最適資本構成
Target / Optimal capital structure(最適資本構成) = 企業価値が最大化するような達成すべき企業の資本構成
企業のWACC計算で用いられるウェイトは最適資本構成を用いてするべきである。
限界資本コスト
Marginal cost of capital(MCC, 限界資本コスト) = 資本を限界的に1単位増やしたときに必要な資本コストもしくはWACC
企業が資金調達の額を増やすと限界資本コストは増加するため、限界資本コスト曲線は右肩上がり。
ブレークポイント
追加の資金調達によってWACCが上昇するのは資本構成の1つの要素のコストが上昇するためBreakpointと呼ばれる中断点が存在。これによって限界資本コストは階段状の形となる。
Breakpoint = 一つの要素の資本コストが増加したときの資金量/資本構成の中の一つの要素
Cost of debt increases when the company borrowed $300 million. Also, cost of equity increases when the company issues $500 million stocks. The company's optimal capital structure is 35% debt and 65% equity. What are the breakpoints for debt and equity?
Breakpoint for debt = $300/0.35 = $857.14Breakpoint for equity = $500/0.65 = $769.23 This result means the WACC increases when the company raises $769.23, and it increases again when the company raises $857.14.
投資機会曲線
Investment oppotunity schedule(投資機会曲線) = 企業が潜在的に投資可能なプロジェクトをIRRが高い順に並べたときのプロジェクト
合理的な企業はIRRの高いプロジェクトから投資するため曲線は右肩下がりとなる。
最適資本支出
Optimal capital budget(最適資本支出)は限界資本コスト曲線と投資機会曲線の交点で求まる。
出典: http://www.myinvestment101.com/marginal-cost-of-capital/
プロジェクトベータ
Project beta = システマティックリスクの指標となるプロジェクトのベータ
企業のプロジェクトの平均ベータと特定のプロジェクトのベータの差を調整するために使われる。
Pure play method
プロジェクトは市場で取引されるわけではないため直接推定する術はなく、Pure play methodを用いて計算する。プロジェクトに類似しているビジネスに従事した企業のベータを用いる。
- プロジェクトと類似したビジネスに専念している(Pure play)企業のベータを計算し、一度、無借金経営を仮定して(unlevered)、D/E比率を元に調整する。これがAsset / Unlevered beta(アンレバードベータ)となる。
- プロジェクトを行う対象企業のD/E比率を反映させて(relevered)、ベータを算出する。これがproject beta(プロジェクトベータ)となる。
- プロジェクトベータからプロジェクトのための資本コストを求める。
- 資本コストからWACCを計算する。
アセット(アンレバード)ベータ
アンレバードβの補足
アンレバードβ(βU)とは、企業が全額資本金で資金調達(無借金経営)すると仮定した際の株式のβ値。負債を持つ企業のβ(=レバードβ)から、財務リスク要因を除去したβとも解釈できる。
参考: アンレバードβ(βU)とは・意味|創造と変革のMBA グロービス経営大学院
プロジェクトベータ
ここで使われる法人税率とD/E比率は対象の企業のものを使う。
カントリーリスク
Country risk = 投資対象の国のマクロ的要因によって資産の価値が変動するリスク、途上国への投資にはCountry risk premium(CRP、カントリーリスクプレミアム)を加算する。したがってCAPMは
と書き換えられる。
CRP = ソブリン債のイールドスプレッド×(株式インデックスの年率の標準偏差/先進国通貨建てのソブリン債の年率の標準偏差)
発行費用
Floatation cost(発行費用) = 外部への株式発行によって企業が投資銀行が請求する費用、NPVを計算するさいに当初のキャッシュフローを調整する必要がある
A company raises \$500,000 to purchase the real estate which will generate $265,000 per year for next two years. The WACC is 3.5% and the optimal capital structure is fifty-fifty. Floatation cost for equity is 3%. Do the company invest in the project?
Floatation cost = 0.03 × 0.5($500,000) = $7,500NPV = -500000 - 7500 + 265000/(1.035) + 265000/(1.035)2 = -4081
The project should be rejected.